ゴッシク・メタル V


ロックを40年も聴いていると、ジャンルは同じロックでも
実質違うジャンルと思われる音楽にたくさん出会います。

ここでは90年代以降に ゴシック・メタルと呼ばれるアーティストを中心にピックアップしました。
このくらい新しくなるとYOUTUBUにいろいろな動画がアップされています。
その動画もいっしょにご紹介します。




モータル・ラブ (Mortal Love)


ルウェーのゴシック・メタル・バンドです。
同じノルウェーのバンドにはシアター・オブ・トラジディやトリスタニアなど、これぞゴシック・メタルといったバンドがたくさんありますが、このモータル・ラブもそんなタイプの代表的存在のひとつです。
演奏はシンプルで、過度な装飾はあまり目立たず、パッと聴いただけではやや素人っぽい感じすらします。
しかし、シンフォニックな綺麗な演奏に女性ヴォーカルのCat(普通にキャットと読むんでしょうか)の、絡みつくような歌声がかぶさると、素晴らしいゴシックな世界が出来上がります。

最近はエヴァネッセンスの成功で「ゴシック・メタルは売れる」的な風潮があり、ゴシックを売りにしたバンドが全然それっぽくない音楽を演奏してたりするのが目立ちますが、ゴシック色をプンプンさせたバンドには頑張って欲しいですね。
なんて言いながらモータル・ラブもアルバムを3枚だけ発表して、すでに無期限休止状態にあるようですが、復活を期待したいと思います。

オフィシャルビデオが無いので、これでもかといった感じでゴシック調のイラストが現れる2本の動画をご紹介します。

2012-03-21



まずはCatの Now close your eyes の囁きがいかにもゴシック・メタルっぽい「I Make the Mistake 」



続いて「Forever will be gone 」








コロナタス (Coronatus)



ドイツで結成された女性のツインヴォーカルが特徴のシンフォニック・メタル・バンドです。
民族音楽的要素を含んでいて、見た目は少し野暮ったい感じがしますが、そこにオペラティックな歌声が合わさると、ヨーロッパの民族音楽が持つ独特な「勇ましさ」と「美しさ」が合わさって妙にマッチします。

多くのオペラティックな歌手が在籍するバンドは、ナイトウィッシュのようにシンフォニックらしさを前面に押し出してましたが、コロナタスはシンフォニックと言いながらも無骨なパワーメタルっぽいところが逆に新鮮だったりします。
ツイン・ヴーカリストの片方で、コロナタスの特徴のひとつでもあったオペラヴォイスのカルメン・シェーファーが脱退して、新しい同タイプの女性が加入してますが、ややパワー不足のような気がします。

曲では「Kristallklares Wasser」が好きですね。
コロナタスらしく新しいんだけど、何故か懐かしい感じがするサウンドが心地良いです。

2012-03-26



動画で「Kristallklares Wasser」



ライブ映像で「Mein Herz」










ムーンライト (Moonlight)


ポーランドの女性ヴォーカルを前面にしたゴシック・メタル・バンドです。
ムーンライトなんて言う、ありきたりな名前ですが、音楽自体はけっこうユニークなサウンドとなっています。
とても綺麗な旋律を、とても綺麗な歌声の女性ヴォーカルがしっとりと、かつ悲しげに歌い上げます。
特に「Ergo Sum」は、もうこれ以上はないよねと言ってしまいそうなくらいに綺麗で悲しげです。私の大好きな曲の一つです。
この曲はこれでメタルか?、と問われれば、疑問は多いですが、ゴシック・メタル・バンドはこんなダークな雰囲気満載のスローテンポな素晴らしい曲がかなりありますよね。
それらの中ではメタル色が薄く、アンビエントな雰囲気を持つムーンライトは、普通の女性ヴォーカル物の音楽が好きな人にもすんなりと受け入れられそうです。

同じポーランドのゴシック・バンドであるArtrosisなどにも言えますが、スローテンポでマイナー調なポーランド語の曲は、何故か妙に説得力があるような気がします。

2012-06-04


動画で「Ergo Sum」。ウィズイン・テンプテーションの「メモリーズ」に匹敵するスローナンバーです。








クレイドル・オブ・フィルス  (Cradle Of Filth)


メイン・ヴォーカルのダニ・フィルスの高音域グロウルが特徴的なデス・メタル・バンドです。
高音域と言えば聞こえは良いですけど、なにか子供がわめいているような声なので、あまり好きではありません。
たしかに適度にゴシック的、かつシンフォニック的であり、その質はかなり高いとは思いますけど、やはりあのグロウルをメインでやられてしまうとどうも。

このバンドを知ったキッカケはリーブズ・アイズのリブ・クリスティンが一曲だけ参加しているからです。
「Nymphetamine」という曲で、完全にリブ・クリスティンがメインとなっているゴシック・メタルな素晴らしい曲です。
それとヴォーカルはリブ・クリスティンではないですが、やはりミディアムテンポなゴシック調な「The Death of Love」も「Nymphetamine」と甲乙付けがたい素晴らしい曲です。

単に私の趣味とぴったり一致するから素晴らしいと感じるのでしょうけど、これだけの雰囲気ある曲ならば、ダニ・フィルスの声も受け入れられます。

2012-05-06



動画で「Nymphetamine」


そして「The Death of Love」







キサンドリア (Xandria)


ドイツのシンフォニック&ゴシック・メタル・バンドです。
シンフォニック&ゴシックとは言っても、けっこう柔らかく甘めな感じで、女性ヴォーカルのリサの見た目と声が更に甘さを引き立たせています。

この手のバンドは曲のメロディが良くないと、ホンワカしてメタルファンには刺激が無さ過ぎます。
幸いにもキサンドリアは、誰が曲作りしているのか知りませんが、甘めなシンフォニック&ゴシックにはもったいないくらいの、ゾクゾクとする旋律を持つ曲が多くあります。

私の最大のお気に入り曲は「now and forever 」で、少しシンフォニックで、少しダークな雰囲気がバンドイメージにぴったりです。
この曲をメタル界には多い、ハキハキと声量タップリに歌うヴォーカリストが歌ってしまうと、逆につまらなくなってしまうかも知れません。

それに軽く民族音楽的な要素もあり、これがまたうまくバンドの面白さを引き上げているような気がします。
個々人の音楽的実力以上に、作戦勝ちというかプロデュース勝ちなバンドかもしれません。

2012-04-18




「now and forever 」








ラクリモーサ (Lacrimosa)


スイス出身でゴシックミュージックの重鎮であるティロ・ヴォルフのソロ・プロジェクト的なユニットです。
デビュー後、しばらくしてから女性ヴォーカルのアンヌ・ヌルミが参加するようになり、ゴシックミュージックをクラシックやメタルなどのジャンルと融合させて商業的にも成功したユニークな存在です。
ティロ・ヴォルフの貴公子的な見た目通り、現代的なゴシック・メタルというより、本来の中世ゴシックをイメージさせる、ちょっと高貴な雰囲気が漂う音楽で、少し取っ付きづらい感じもします。
しかし、これがまた正統派ゴシックミュージック(?)らしくて良いかなとも思います。
メタルにジャンル分けされるのは聴く側の勝手で、そもそもジャンルなんてどうでも良い音楽なんだと思います。

曲によってはクラシックそのままのような曲があり、「だったら正真正銘のクラシック聴くよ」なんて気もしますが、普通のヴォーカル曲には良い雰囲気が満載されています。

2012-06-20




「 Feuer 」









Dyonisis


ゆったりと美旋律なゴシック調音楽を演奏するユニークかつ実力派バンドです。
このバンドのことはサクッとネットを探しただけでは見つからず、私もプロフィールなどはあまり知りません。

Dyonisisのメンバー個人個人は経験豊富な実力派バンドらしいですが、ライブ映像を見る限りではスタジオ録音された音源にはかなわなそうです。
やはりこの手の雰囲気をライブで出すのは至難の業なんでしょうね。
特に私の最大のお気に入り曲「Arachne's Song 」はスタジオ録音の方が数段上ですね。
というかスタジオ録音が良すぎると言った方が当たっているかも知れません。

ヨーロッパではこの女性ヴォーカルの ように、おそらくキチンと声楽を学んだであろう実力者が、ロックやメタルの世界に数多くいます。
やはり歴史と文化の違いなんですかね。

2012-04-28



動画で「Hunter」








ベセーチ (BESEECH)


スウェーデンのゴシック・メタル・バンドです。
ゴシックを強烈にアピールすることよりも、ヨーロッパ風なロックをゴシック風にアレンジした聴きやすい曲が多いです。
全体的にゆっくりとダークな雰囲気に包まれた曲が多いですが、ゴシック・メタル特有のトゲトゲしさはあまり無く、ガチガチのメタルファンには物足りないかもしれません。

男女ツインヴォーカルで、最近のこの手のバンドとしては珍しくグロウルはほとんど使っていません。
そのためか強烈なインパクトが無い代わりに、ゴシック・ロックとしてBGM的にサラリと聴くには適しています。

このバンドを聴いていると、昔ちょこっと聴いていたヨーロッパ風ロックを思い出してしまいます。
男性ヴォーカルの声質から、昔ジャパンという妖艶なビジュアルで人気のあったバンドで活躍した後、ヨーロッパ風ロックを歌っていたデビット・シルビアンを思い出してしまいます。

2012-05-19




「Drama」







Artrosis


ポーランドのゴシック・メタル・バンドです。
女性ヴォーカルのMedeahをフロントに、独特なゴシック・メタルを作り上げています。
全体的に沈んだダークな雰囲気なんですが、Medeahのけだるそうな歌い方というか個性が曲全体を支配しているような感じです。

私の好きな曲「Among flowers and shadows」では、軽く民族音楽などの要素が含まれていてArtrosisでなくては聴けないようなユニークな空気が漂っています。
ただしデジタル音が入りすぎてしまって、アンダーグラウンド感が薄いアルバムもあるのは個人的には残念です。

そもそもArtrosisなるバンドは日本では殆ど知られていません。
私がこの手のバンドを知る最大の情報源は、緑川とうせいという方のホームページで、メタルやヨーロッパの音楽に関しては半端じゃない情報量があります。
Artrosisなどの素晴らしいバンドを知るキッカケを作ってくれるホームページ「ときのながれのなかで」には感謝しています。

2012-05-11



動画で「Among flowers and shadows」




続いて「Tym dla mnie jest」








クロスターケラー (Closterkeller)


ポーランドのゴシック・ロック・バンドです。
デビュー20年以上となるベテランで、女性ヴォーカルの Anja Orthodox の才能とキャラが最大の売りになっていると思います。
詳しくは知りませんが、他のメンバーはコロコロと変わっているようです。
ロック調からオペラ調まで様々な歌い方をするAnja Orthodoxは、変幻自在な点や顔もちょっとだけ似ているところからニナ・ハーゲンを思い出してしまいます。
ニナ・ハーゲンほどハチャメチャさは無いですけどね。

私がこのバンドが好きな最大の理由は、全体としてはゴシック的なんですが、特定のジャンルに特化することなく、かつメリハリが効いた演奏で、気分転換にはちょうど良いバンドだからです。
逆にキャリアと良い曲が多い割には人気が無いような気がするのは散漫な感じがするのでしょうか。
もっとも日本で無いだけで地元ではそれなりに人気があるのかも知れませんけどね。

2012-06-16



動画でいかにもヨーロッパのゴシック・バンドらしい「Ogrod poBcieni」



次は「Ogrod po?・cieni」と似た雰囲気で少しスローな「Bez Odwrotu」







バトルロー (Battlelore)


フィンランドのシンフォニック&ゴシック・メタル・バンドです。
男性陣のエンターテイメント性の強いメイクとステージ演出が話題になりやすいですが、音楽自体も素晴らしい「シンフォニック&ゴシック」を聴かせてくれます。

女性ヴォーカルはクリーンヴォイス、男性がグロウルと、これ自体は珍しくないものの、シンフォニックな色付けがとても美しいメロディで、男女のヴォーカルが一体となり激しいながらも優しさを感じてしまいます。
トリスタニアのゴシック性とナイトウィッシュのシンフォニック性のいいとこ取りをしたような音楽に、エンターテイメント性をプラスして、ヨーロッパでのかなりな人気が分かるような気がします。

曲では「Third Immortal」や「House of Heroes」が好きです。
見ても聴いても楽しいシンフォニック&ゴシック・メタルという意味では現役ではイチ押しバンドです。

2012-05-27



動画で「Third Immortal」です。 激しさと優しさがとても調和しています。



続いて「House of Heroes」








インペリア (Imperia)


ノルウェーのシンフォニック&ゴシック・メタル・バンドです。
女性ヴォーカルのヘレナ・イレーン・ミカエルセン は実力・実績ともに素晴らしく、元ナイトウィッシュのターヤ・トゥルネンにも匹敵してしまうんではないかと思えるほどです。
まぁ、ターヤ・トゥルネンとの大きな違いは「女」を売りにしていることだと思います。
これは強みになるのか、俗っぽくなって音楽をまともに聴いてもらえなくなるのかわかりませんが、メタルは所詮エンターテインメントなので、こんなのも有りかなと思います。

インペリアを結成する前はトレイズ・オブ・ティアーズの初代ヴォーカリストとして活躍していて、けっこう人気もあったようです。
ただ個人的趣味としてはもう少しゴシック性が強ければ良かったなと思います。
曲によっては普通のハードロックという感じで、せっかくヘレナ・ミカエルセンがヴォーカルなのにもったいないなと、この手の音楽が好きな人は感じてしまうと思います。
「Mysted by desire」などはきらびやかなシンフォニック・サウンドとヘレナ・ミカエルセンのヴォーカルが合わさってナイトウィッシュとダブってしまうくらい素晴らしいサウンドです。

2012-05-31